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2008/08/13

<書評> 『ポスト消費社会のゆくえ』

『ポスト消費社会のゆくえ』
辻井 喬・上野千鶴子
文藝春秋(文春新書 633) / 2008年
 

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評=榎本了壱

 上野千鶴子さんから本『ポスト消費社会のゆくえ』が送られてきた。上野さんには毎年『御教訓カレンダー』を送っているので、著書が出来ると送っていただいている。『おひとりさまの老後』もいただいた。この本は超ベストセラーになったけれど、私は『ポスト消費社会のゆくえ』に驚愕し、感動した。すぐに感想が書けないくらい、呆然とした。(…)

 セゾングループの統帥であった堤清二(この本では、作家辻井喬名で登場している)を相手に、セゾングループの隆盛と、凋落の理由の核心に触れていく。上野千鶴子さんは、社会学者として、セゾングループの存在に長く関心を持ってきた。手の内にはセゾングループにまつわる検証に十分な資料を抱えている。その最強のインタヴュアーが、統帥・堤清二に挑む。全編がそんな展開なのである。ここでは辻井喬と表記するべきであろうが、上野千鶴子の凄まじい舌鋒を、老獪したたかにかいくぐりながら、しかしじわじわと歴史の暗部に隠されていたセゾン伝説の全貌を、光のもとに晒していく。覚悟の回想録でもある。1950年代から始まる西武百貨店を拠点としたセゾングループ作り、70年代、80年代の圧倒的なカルチャー戦略、実は私もその一端で、1975年パルコから『ビックリハウス』を創刊し、『日本グラフィック展』に始まるアートコンペティション作りのただ中にいた。いわゆるこの時代、クリエーションに関わる人間で、セゾングループに関わらない人間は、人であらずといった印象すらあった。田中一光、朝倉摂、石岡瑛子、小池一子、山口はるみ、浅葉克己、操上和美、藤原新也、糸井重里、はては寺山修司まで、凄まじい人脈図を形成していく。それがまるで、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』を読むような、急激な終息を迎えていく。西武百貨店、パルコ、西友、ファミリーマート、インター・コンチネンタル・ホテル、無印良品等々、西洋環境開発グループの失策によって、グループは結束力を失い崩壊していく。この先は『ポスト消費社会のゆくえ』を一読されることを強く薦める。この50年間に日本で何が起こっていたのか、セゾングループの歴史だけではなく、日本の経済史、文化史に触れる強力な対談集である。惜しむらくはこの本のタイトルが、この凄まじい、熱くも冷静な舌戦の興奮を伝えるには不十分過ぎることを記しておきたい。
 

 追:今年10月晶文社から発刊される『東京モンスターランド』は、私自身のパルコ体験等を含んだ70年代、80年代を中心とした回想記。是非合わせて読んでください。 

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