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2008/07/01

特集:石井裕也監督×柴田剛監督インタビュー

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前回のトークはコチラ!


☆このインタビューは、池袋シネマ・ロサにて行われた石井裕也監督作品『ばけもの模様』の公開に合わせて撮られたものです。


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**国内で勝負して出てきた人の方が逆にすごいと思うよ**

――卒業制作で世界に出る方法っていうテーマでお話を伺いたいんですけど。

柴田剛(以下柴田) 卒業制作で世界に出る方法……うーん、逆に言ったらね、日本で勝負するには、世界の映画祭に出る方が楽なんですよ。日本のメジャー映画もインディー映画も、外国の人にとっては変わらないし、並列して見てもらえる。むしろ国内で勝負するのが一番難しい。ポッと出とか、無名とか言われちゃうでしょ。しかも国内のメディアも映画の華やかさをすごくアピールするでしょ。そんなん嘘だから。だって蝶ネクタイなんかしたことないやつが無理矢理蝶ネクタイしたりしてる(笑)。だから日本で勝負するのは難しくて、海外に出て、ある程度形作って……そうするとちょっと見てやろうかなって思われるでしょ? 僕なんかもそうだし。俯瞰してみると、自分もそこにエントリーした身として、国内で勝負して出てきた人の方が逆にすごいと思うよ。

――技術や経験といった、国内ではネックになるものが、海外ではそうはならないという。

石井裕也(以下石井) 出演者にしても、向こうの人達にしてみれば誰が出ているかはあまり関係がない。売れてる役者さんだろうが僕だろうが、大して違いはない。日本では全然違ってきますけど。技術面でも未熟である事はあんまり気にしないと思います。ビデオの安い画で撮られていようが、面白いものは面白いって言う。さらに加えると、東洋のエキゾチズムというか、エロさってあるじゃないですか。向こうの人はどう考えても東洋というかアジアに対して憧憬に近い見下し方をしていますから、ちょっと技術が低くて、若いってなったら、そこに何かしらの魅力を感じる可能性はあると思うんです。だから卒業制作を作る時は、開き直ってそういう未熟さを敢えて売りにしようと思いましたね。

――石井監督は日本的な要素をかなり意識してますよね。

石井 そこはかなり意識的にやっています。と言うかむしろ、日本的な面白さをアピールできないのであれば、極論ですが世界の中で日本映画の存在価値はないと思いました。と言うか、思い込みましたね。

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**要するに常に最短ルートを取りたいんです**


――今までの話でも、石井監督はテーマを決めて、海外にターゲットをはっきり定めて撮っている感じがしますね。

石井 正解か否かは別として、僕はその方法が一番早いと思っただけです。年間で一人しか貰えないPFFのスカラシップを目標にするのは、次回作が撮れるかどうかも定かでない貧乏人にとってはリスクが大き過ぎるじゃないですか。それはちょっと無謀すぎるだろうと思って。だからまあ、逆輸入作戦です……これもまあただの予想だったんですけど。要するに、城攻めってあるじゃないですか。一の堀を埋めて二の堀を埋めて、外側から徐々に倒して行くっていうイメージはあんまりなくて、とりあえず本丸を一回爆撃してから(笑)、徐々に外に向かっていって、最後に堀を埋めるみたいな感じなんですよ。要するに常に最短ルートを取りたいんです。

柴田 絨毯爆撃だね(笑)。

石井 国内の事で言うと、たかが卒業制作でもやっぱりメジャー映画と対等に勝負したいじゃないですか。まあそもそも無理なのかもしれないですけど、可能性があるとしたら唯一これ見よがしに若気の至りをひけらかす事しかないなって思うんです。だってそこでしか勝負できないじゃないですか。

柴田 俺石井くんの映画を見て思うのは、youtubeのタグと一緒で、要は作品のクオリティはもちろんのこと、監督自身がキャラクタリスティックに振る舞わないといけない。なんでかって言うと、自分が広告塔にならなきゃしょうがないでしょう。それに加え、石井くんは普通の制作会社が数千万で映画を撮ってるところを、百分の一の値段で撮ってる。逆に言ったら、数千万で映画撮ったら、それを回収しなくちゃいけないっていうプレッシャーがすごいありますよね。それに比べたら遙かに楽なんですよ。そこがすごいなって思う。しかも面白い。もう一個押すと、すでに長編4本だよね。攻撃材料が揃ってる。例えば2週間かければペイ出来ちゃうし。他の制作会社に経済で勝っちゃう。経済で勝っちゃってるっていうところだけでもう、他にないでしょ。


**監督ってマゾ的な仕事なんですよ**


――柴田監督は、今『おそいひと』が国内外で巡回上映されてますけど、あの作品も非常に強烈なテーマですよね。そういうテーマ性は最初から意識してたんですか?

柴田 『おそいひと』はテーマとして先にあったわけじゃなくて、あれは出会いがあったから始まったんだよね。僕の先輩で、ヘルパーをしている仲悟志さんって人が、住田さんを紹介してくれて、「一緒に映画やらないか」って言われて。お金も結局神社の神主さんが出してくれたんだけど、最初「いくら欲しいんだ」って言われて「一千万」っていったら、それは無理だって言われて、結局400万だったかな。僕は常にそういった状況に応じて撮ってる気がする。

――なるほど、先にテーマありき、というわけではないんですね。

柴田 もちろん、この映画完成したら、きっとこういう反応が出るんだろうなーくらいの事は思ってたけど、とりあえず客を入れることを考えないといけないから。テーマはそんなに意識してないね。石井くんは脚本をゼロからやってるから、ある意味明確なテーマを設定しつつ制作出来るんだと思う。僕の場合はたとえて言うなら、だれかが買ってきた食材があって、中にはグレープフルーツとか入っててるんだけど、とりあえずこれでカレー作れって言われて、作る。その時の俺のミッションとしては、グレープフルーツを隠し味にして、上手く生かして仕上げなくちゃいけない。むちゃぶりですよね(笑)。要するに監督ってマゾ的な仕事なんですよ。……誤解があるかも知れないけど、僕がやりたいのは基本的には音楽映画なんですよ。昔から映画音楽がめっちゃくちゃ好きで、映画から音楽に入っていった。『ポリスアカデミー』『デルタフォース』『グーニーズ』『スターウォーズ』『インディージョーンズ』……音楽聴いただけでもう一回映画見ようと思うでしょ? それに僕の周りには音楽やってるやつが圧倒的に多いから。

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『青空ポンチ』 9月中旬、ユーロスペースにて公開予定
公式サイト 
http://aopon.jp/


――今度公開される新作『青空ポンチ』も音楽の映画ですよね。撮影はどうでしたか?

柴田 プロデューサーに脚本を見せたら、殆ど採用されず、編集もやらせてもらえなくて。監督って要は味付けをする役割じゃないですか。プロデューサーも全然仲いいんですけど、こと映画の話になると、そういう形で作ってくれって言われて。でも、今回は悉く、自分が一緒に仕事したい人たちと一緒に出来た。技術から、カメラから、役者から……至れり尽くせりで。監督の立場超楽じゃん! って。面白かったですよ。一個ピックアップすると、JITTERIN'JINNの「夏祭り」が元ネタで脚本書いたんですけど、編集作業の途中で、彼らのレコーディングスタジオまで行ったんですね。しかも自分のために新曲やってくれんだよ! それだけでJITTERIN'JINNファンだったらちょちょぎれるっしょ! 俺イカ天の頃、勝ち上がっていく頃から知ってるから、おおー! みたいな。格好良かったですよ。


**期待感じゃなくて、確信ですね**


――商業映画でバツンと予算が下りて、それから人を集めて映画撮るよりも、出会いがきっかけだったり、仲間内で温める段階があるとか、それでみんなで集まって相談したり、お金集めたりっていう時間があってって……そういうことってなんか今まであからさまにやられてこなかったと思うんですけど。

080608_213202_2柴田 いやいや、それは基本なんですよ。ただみんな声高に言ってなかったというか、何か変にメジャーに寄った考え方を持って作るでしょ。そういうこと言ってたら貧乏くさいんじゃないかみたいな。8ミリの時代っていうのは、どうしても映画のモノマネをしている映画っていう意識があった。その中でも実験映画の人達は逆にその8ミリの貧乏くさい質感を逆に生かしてやってたけど、劇映画を作ってた人は、映画のゴッコ的なものを作ってるっていう風にみなされてたんだよね。だけどデジタルビデオが出たときに、映画がものすごい低予算で撮れるようになったんですよ。それに劇場も楽になった。僕昔映写技師やってたんですけど、ある日映写機のライトつけっぱなしで帰っちゃって、次の日の朝勤の人にすごく怒られた(笑)。下手したら爆発して小屋が吹っ飛んでたかも知れないぞって(笑)。要はそういうストレスとかなくなったよね。劇場もDVだと圧倒的にかけやすい。だからある意味、下手な制作会社が作る映画なんかより、100分の1でもっと面白いことを出来る。もし客が入らなくても、ペイ出来る。リスクヘッジが少ないから。だから思い通りのことができる。この概念(自主映画、学生映画は安っぽいという)が逆さになって、今後潰れていく日本の制作会社が増えていくと思うよ。そういう意味で死体が転がる(笑)。

石井 何て言うか……とりあえず作品を面白くするためには何をしたって構わないというか、そういう人でなしな感覚を常に持っています。現場ではいつもハイになってますね。作品を少しでも面白くするためにはなりふりなんて構いません。何でも出します(笑)。例えば低予算映画で脚本を書く時に、笑いというものは常に意識しています。お金はなくても、知恵で何とか作れるじゃないですか、笑いって。そういう工夫を寄せ集めています。

柴田 前回のトークで、まず作品のクオリティが最低限あって、かつ監督自体がキャラクタリスティックじゃないといけないって話をしたんだけど、あともう一つ決定的なのが経済。石井くんは初めてそこら辺を明確に意識してる監督かもしれないね。……でも映画業界が変わるのはいいことだと思いますよ。状況が変わるのはいいことだと思う。期待感じゃなくて、確信ですね。変わる。5年以内に変わる! これ載せていいっすよ。柴田予言者だってなるから(笑)。

2008.6.8 池袋・シネマロサにて

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◆プロフィール

石井裕也(いしい ゆうや) 映画監督

1983年生まれ、埼玉県出身。大阪芸術大学の卒業制作として「剥き出しにっぽん(91分/16ミリ/2005)」を監督。この作品で第29回ぴあフィルムフェスティバル「PFFアワード2007」にてグランプリ&音楽賞(TOKYO FM賞)を受賞。さらに同作品は第26回バンクーバー国際映画祭ドラゴン&タイガー・ヤングシネマ・アワードにノミネートされた。 また、驚異的なスピードで長編映画「反逆次郎の恋(89分/DV/2006)」、「ガール・スパークス(94分/DV/2007)」、「ばけもの模様(93分/HD/2007)」を制作、完成させた。
そして、それら4本全ての長編映画が第37回ロッテルダム国際映画祭で特集上映されるなど、前代未聞の新人監督が出現したとして世界的なムーブメントに発展。 さらに、アジア.フィルム.アワードでは、第1回「エドワード.ヤン記念」アジア新人監督大賞を受賞し、第32回香港国際映画祭ではまたもや4本全ての長編映画が特集上映されるなど、今、世界から最も注目されている若手映画監督である。
ホームページ http://mukidashi.com/


柴田剛(しばた ごう) 映画監督

1975年 出身地横浜
99年『NNー891102』(99’/16mm/75min/color/)製作・監督・脚本・編集。同作品は2000年ロッテルダム映画祭、SONAR 2000、2001年NELSON-ATKINS美術館で招待上映され、同年8月シネマ下北沢レイトショー(現シネアートン)で4週間公開上映。その後クラストハードコアパンクライブドキュメンタリー『ALL CRUSTIES SPENDING LOUD NIGHT NOISE 2002』(02’/DV/60min/color/stereo)が多くのパンクスや音楽好きに迎えられ世界各地でブートが出回る。同時並行して撮影していた映画『おそいひと』(04’/DV→35mm/83min/B&W part color/stereo)は長編第2作となる。同作品は2004年東京フィルメックス コンペティションに選ばれ、その後14カ国 16映画祭で上映。2005年ハワイ国際映画祭 「Dream Digital Award」受賞。 2007年12月にポレポレ東中野で公開するや『おそいひと』ブームが加速し4ヶ月ロングランを記録。口コミで全国に広がり、現在も各地で公開が進行中。2008年夏、ニューヨークを皮切りに北米10都市での公開が始まる。そして最新作『青空ポンチ』の公開も今夏に控えている。独自の世界観が世界中から楽しみに待たれている映画監督である。
『青空ポンチ』 公式サイト http://aopon.jp/

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