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2008/06/11

特集:遠藤一郎×愛☆まどんなインタビュー①

Vol21

文 = 藤沼 亮

追悼:
 2008年、6月8日の秋葉原での出来事を前にして、私はためらいなく全ての犠牲者へ哀悼の意を表する。しかし、奪われた命を前に誠実であろうとすればこそ、私はこう書くことを自らに課す。誰も無関係-無責任ではなかった、と。言葉になることを拒む出来事の特異性を前にして、沈黙することを選ぶ誠実さがある一方で、言葉にすることで喪われるものを引き換えにしてでも、伝え、分かち合わねばならない切実な状況がある。彼をそこまで追い込んだ社会・法・政治・文化、そこに漂う空気。私たちもまた、それらを構成する一員であることを忘れた犯行への断罪は、犠牲者への侮蔑でしかない。
 彼は裁かれねばならず、償いえぬものを償わねばならない。それは生涯かけて支払われるべき負債であり続ける。だが、彼を思いとどまらせるだけの力を持った文学や思想や音楽はなかったのか。彼をそっと抱きしめる恋人は、無力感に打ちひしがれながらそれでも隣にそっと佇む友だちはなかったのか。あるいは、充分な収入は。人が人を殺そうと思い立ち、それを実行する。そのような場所にまで人を追いつめる時代の空気を問い直すこと。犠牲者の追悼はただちに、この時代を生きる私たちにそのような問いと対話の開始を要請するはずである。
 そのような対話へ差し向けて、私たちはこの記事とインタビューを送る。規制と監視ではなく、立場と志向の差異を前提とし、その差異を肯定しながら共に在ろうとするための問いかけと対話の交錯する線上に未来を賭けて、この記事を送る。私たちの手が、誰かを殺めるためではなく、誰かの痛みにそっと手を伸べ、悼み、それがときに批判の拳となろうとも、誰かと手を取り合うためにあること。喪われた命を前にして、私たちはそのことを問い直さねばならない。


******

 僕が秋葉原の街頭でパフォーマンスをする彼らに出会ったのは二月の終わりごろで、駅前に横付けされたミニバンの前で、女の人が、無数のカメラのレンズに囲まれて、車の壁面に絵を描いていた。車の屋根には小さなアンプとi-bookが置かれ、DJがテクノとアニメソングをマッシュアップしたトラックをかけていて、その音色には不似合いなささやかな音量で四つ打ちのキックが鳴っていた。
 彼らが何者かも、事情もわからないまま、僕は足を止め、少しずつ首を振っていた。縮小再生産されたハプニングアート、コメディーとして蘇った三度目のサマーオブラブ。けれども彼女は「萌え」的タッチの美少女を描き、そこで流れているのはアニソンだった。現代美術とオタク文化とレイブカルチャーの重なる域であり、同時にそのどれからも逸脱、というか相手にされなそうな緩い場所。



愛☆まどんなライブペインティングの映像です!
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それから僕は何度となく、このライブペインティング/レイブに足を運ぶことになる。街中に監視カメラが溢れ、公道でのパフォーマンスを警察が取り締まる街のど真ん中で、彼らはダンスフロアを切り出す。敷石の下の砂浜はフロアだとでも言うかのように。それは「帝国」の外部と言ってもいいし、インターネットの外部と言ってもいい。消費への欲望をダンスへの欲望へ脱臼させる場所であり、全き無為にそこにとどまることから始まる出会いと対話の場所でもある。秋葉原の駅前でメイド服の女性と酔っぱらったおじさん、カメラ小僧やクラバーやその他よくわからない人々が同じ場所を分かち合う。一時的自律ゾーンってなんだっけか、とか、ネグリは藝大ではなくここに連れてくるべきなんじゃないか(この時点では来られるものだと思っていた)とか考えながら、たぶん15Wの小さなギターアンプから放たれるスカスカのキックで、僕は二月の夜に汗ばむほど踊った。
 彼女が絵を描いている車の逆側には、既成のデザインフォントでもゲバ字でもない字体で「未来へ」と大書されている。そう、それでいい。この寄る辺なき時代に必要なのは、本音と建前とかネタとベタとか夢と現実とか、そういう二項対立を脱臼させる強度で、生への欲望を、笑いや皮肉に逃げずに肯定する言葉だ。
 未来美術家遠藤一郎、彼が「未来へ」というメッセージを掲げてこのライブペインティング+DJ・VJによるパフォーマンスを仕掛けている。ここで絵を描いているのが愛☆まどんな、彼女の吹っ切れていてどこか切ないキャラクターがあの場のやんわりとした求心力になっている。DJ・VJを務めるのはコバルト爆弾αΩというチーム。アニメソングや懐メロとテクノをマッシュアップして、分断統治されたゼロ年代のたこつぼトライブを横断するDJのαと、街頭の電飾看板-資本の光に、光量において負けても、印象において決して負けないとち狂った映像を路上に投射するVJのΩ。そんな彼/彼女たちの連携で、日曜日の夜、昼間の喧騒も途絶える頃合いから秋葉原駅前にて、パフォーマンスが行われている。
 僕が初めて彼らに出会った日、DJが最後にかけたのは電気グルーブ「虹」で、イントロのシンセがかすかに聴こえて来たときに思わず歓声をあげたのは僕一人だったけれども、「サブカル」にいじけて閉じこもっていた90年代のテクノが、ありえたかもしれない別の未来を生きようとし始めた瞬間だったように聴こえて、少し涙が出た。その涙とキックに煽られた身体から問いを立ち上げること、それが少しでもこの時代を生き抜く知恵と技術の足がかりにでもなればいい。90年代-思春期に留保され続けた優しさと友愛の名において、僕は彼らの「未来」を支持する。いま、PCのモニターの前で一人、この文章を読みながら「くそくらえ」と舌打ちした、ぼろくそになりながら生き抜いているあなたを、あのフロアは歓待している。

以下、遠藤一郎と愛☆まどんなのインタビュー、そのことが嘘でないことは、彼らの言葉の端々に出ていると思う。


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●●遠藤一郎 × 愛☆まどんなインタビュー●●


◆ 遠藤一郎に聞く~「世界は“真っ黒”?」

Ichiro0――まず、生い立ちから聞かせてもらえるかな。あと影響を受けた人とか物とかあれば教えて貰いたいんだけど。

遠藤一郎(以下一郎):小学校の頃はイジメられてた。一年生の最初の給食の時間に、給食のおばちゃんが、ポークカレーを作ってくれるんだけど、俺、カレーと牛乳っていう組み合わせが馴染めなくて、みんなおいしいって言ってる中で、ゲロ吐いた(笑)。そこからもう6年間ずっとイジメられた。始めゲロっていうあだ名で。残酷だよ。1、2年生の頃は、仲間はずれ的な感じだったんだけど、3、4年生になると段々、机を外に出されたり、上履きをドブに捨てられたり。5、6年はあっけらかんとしてきたから、あまりイジメられてる感じはしなかったけど。

――中学になるとどうなるの?

一郎:中学はパッパラパーで童貞のバカ中学生だった。部活はサッカー(笑)。僕静岡の御殿場だったんで、小学校からずっとサッカーやってるんだけど。「キャプテン翼」世代だから。あれが無かったら入ってなかった。もうマンガとかの影響モロに受けて生きてるからさ。

――その頃はイジメは無かったの?

一郎:うん、だから中学が一番楽しかった。中学の頃あんなにバカで楽しかったのに、高校に入って、色々考えるようになっちゃって。だから高校入ってすぐに、ゴールデンウィーク明けには学校いかなくなっちゃったのね。チャリで1ヶ月とちょっと旅に出た。原爆ドームまで。

愛☆まどんな(以下愛):なんで原爆ドームだったの?

一郎:原爆ドームと宮沢賢治記念館は小学校の頃からずっと気になってて、行かなきゃと思ってた。中学までって義務教育じゃない。本当に自分のやりたいことをやってきたかっていうとそうじゃなくて、高校に入って急に、俺は原爆ドームを見なければならない、って。あそこ行くなら、新幹線じゃ意味無い、チャリでひいこら行ってこそだろうみたいな。

――何かしら今の下地みたいな、“表現活動”みたいなのに目覚めたのもそのときから?

一郎:アートに目覚めちゃったっていうのは、もうずっとあとになってから、ほんと去年くらいからかな。

――何でもいいから面白いことしてやろうっていう気はあった?

一郎:面白いことしてやろうっていうよりは、前から漠然と、世界を良くしなきゃ、っていうのがあって。

――世界を良くしなきゃ、なんだ。
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一郎:うん、次の世代のために、未来を明るくしなきゃって。やばいよ、俺たちの世代で終わっちゃうよっていう。それで音楽とか手を出して、今もやってるけど、それを20代ずっとやってきたら、会田さんにたどり着いて、おお美術か、みたいな。ホントは音楽が一番好きで、音楽の力を一番信じてるけど、まあ流れでやってきたら、 今は美術かな。前から使命感で動いていて、今は美術でそれをやってるんだけど、別に美術に拘っているっていうわけじゃないんだよね。

――世界を良くしてやろう、っていうところなんだけど、“世界に反抗”してやろうっていうのは無かったの?

一郎:それは無かった。世界ってどうしようもないなって、世界は真っ黒だなっていうのは思ってたし、今も思うけど、世界を黒くしてやろうっていう発想は無いかな。

――今の一郎くんの真っ直ぐなメッセージっていうのは、相当なひねくれなり反抗精神なりを通過して一周回って、ド直球なメッセージになってるのかなって踏んでたんだけど、そういうわけではないんだね。

一郎:俺って相当駄目だと思うのね。まあ家から出ないし、何に関してもイライラしてたりだとか。そういうのはあったけど、でもやたらめったらな破壊衝動では無かった。破壊行動はしてるけど。感情としては、世界を黒くしてやろうとかっていうのは、今思い返してもやっぱり思い当たらないかな。今秋葉原で、楽しくしてはいるけど、ぶっ壊してる面もあるし、それがないと次にいかないっていうのもあるし。次に行くために壊してるっていうか。なんか、可能性がすごく好きで。ああ、そうだね、可能性好き。可能性好きなんだよ。

――自分の人格形成であれは外せないっていう要素なり出来事ってある?

一郎:やっぱ御殿場っていうところに生まれて、毎日富士山を見てたっていうのは大きいかも。地元のやつって、別に今日は富士山こんな感じか~って話したりはしないけど、俺小学校の頃から、毎日、意識的に見てて。それは大きいかな。あと今でもそうだけど、戦争のことが気になってしょうがない。どうしようもなく。絶対行かなきゃって小学校の頃から思ってたのが、原爆ドームとか、宮沢賢治記念館はちょっと違うかも知れないけど、知覧特攻平和会館とか・・・・・・なんか他人事のように思えないんだよね、特攻隊が。俺、戦場行ってたのかなとか思ったり。


◆ 愛☆まどんなに聞く~「女の子が大好き!」

Aima0_3 ――そんな具合で、あいまーにも、影響を受けたものだとか、クラスのポジションとか聞きたいんだけど。

愛:小学校の頃は目立ちたがり屋のお調子者だったよ。ポジション的にどっちかといえばイジメっ子タイプだったかなぁ。今も変わらないけど、気分屋だし短気なんだよねぇ。絵描くのは当時から好きだったよ。他は絵本とエロ本を読むことが趣味だったかな。間逆のジャンルだけど両方好きだった(笑)。あとリカちゃん人形遊びは結局中学生までずっとコソコソやってたね。特に髪の長いティモテがお気に入りで裸にして遊んでた(笑)。

――それ一人でやってるんだよね?

愛:そう(笑)。中学時代は変態の最高潮だったよ。恐ろしくて言えやしない・・・なんつって(笑)。性格はすごく閉鎖的になっちゃって、思春期の悩みも重くて、ますます女の子の体を意識した絵を描き始めたし、ますますリカちゃん人形も危ない独り遊びになってたと思うよ。

――なるほど、中学の頃閉鎖的だったっていうのは、何かきっかけあるの?

愛:特にはないかな。なんだか中学は友達関係も面倒くさくて。いやぁとにかく数学が嫌い(笑)。そのかわり高校はすごく楽しかった! 美術の専門校で規模の小さい学校だった。アットホームで生徒ひとりひとりがちゃんと自分を持ってて、気の合う友達がたくさん出来た。デザインを専攻してて、キャラクター開発とかプロダクトデザインが得意だったから将来はそっちに進みたいなとは漠然と考えてたかな。

――そこから今に至る?

愛:東京芸大を受験して現役で落ちたんだけど、浪人はしないでその年から美学校に通い始めた。中学のときから会田誠さんが好きだったから「本当に講師に来るの!?」みたいな好奇心で入学した。そしたらホント会田誠だぁ!!!って(笑)。美学校の時は高校からの流れでキャラモノの絵を描いてたんだよね。それを会田さんに見せたら、「この手のタイプはよくいるよね」って一言で流されちゃって、急につまんなくなっちゃう時期とかあった(笑)。だから女の子の絵を意識して描き始めたのはそれからで、ある日たまたまらくがきしてたら、愛ちゃんのリアルを感じるからそっちいっぱい描きなよって言われたのがきっかけ。それまで女の子の絵は人には見られたくない日記のようなものだったから。Aima1_2

――会田誠以外にも、影響を受けた人って誰かいる?

愛:マンガだと大友克洋の『AKIRA』が一番。エヴァとか桂正和、江口寿史、ガロとかアッ クス系が好きだった。一郎くんから教えてもらったロリコン漫画先駆者の内山亜紀もすごく影響受けた。音楽で前から変わらず好きなのは、小島麻由美。アイドルソングとかアニソンも。おニャン子の高井麻巳子がとにかく好き。日本女子の最高峰だと思ってる。絵にも影響したし。可愛い女の子っていいよね~・・・・・・(笑)。

一郎:女の子は3Dでもいいの?「あたし2Dにしか興味ないって」しょっちゅう言ってるけど。

愛:私の2D好きとは、自分が描く絵が好きな事なんだよねぇ。私、自分の描く女の子を純粋にかわいいって思うんだぁ~。

一郎:だってみんなピュアだもんね。あいつらね。

愛:目が生きてるからね~。


インタビュー後半はコチラ!



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NATURAL HI!!遠藤一郎による『第一回全員展!!!!!!!!』

6月10日~6月17日 日月休
MAGIC ROOM? にて

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