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2008/01/31

<<批評>> ニブロール『ロミオorジュリエット』

ニブロール10周年記念の新作『ロミオorジュリエット』は
ダンスヒストリーの1行にその奇跡をしっかりと刻み付けた


at 世田谷パブリックシアター(2008年1月18-20日)


N2
全て写真:飯田研紀


評=榎本了壱

この作品の合い言葉は「No,No Border」だという。ボーダレス(境目のない)という不分明、不明瞭な世界に生きて、でも、「キミとボクの間には超えられない明確な線がある」と断言する。あるいは懐かしの青春ラブソング「No,No Boy」のオマージュか。それにしてもシェークスピアに始まり、古典バレエの人気定番でもある「ロミジュリ」をやるというのは、さすが10年目のニブロール。ダンスヒストリーにしっかりと刻み付ける決意の新作と受け取った。おかしなことに、周囲のダンス関係者が「トラムの方にいっちゃったわ」と笑い合っていたが、これも10年目のニブロール、しっかりとセタパブの大舞台での大興行、しかも立ち見の出る盛況さだ。これだけでも、ニブロールおよび、矢内原美邦の獲得した実力と名声は確固たるものになった。(…)

N4_2 ところが、舞台が進行するにつれて、いったいどうして「ロミジュリ」なのと、舞台の上のダンサーたちの中にロミオとジュリエットを探そうとする、妙な筋書き探しをしている自分に気づいた。いやいや、これはもしかして、「ロミジュリ」に描かれた大きな概念としての青春恋愛、あるいは熱烈な他者探し、あるいは愛と死を通して生きている瞬間の人類活劇を抽出する、そんなコンテンツでこの作品は構成されているのではないか。そう見ると、出ているダンサーすべてがロミオあるいはジュリエットであり、客席に座っている(一部立っている人もいた)私たちも、ロミオかジュリエットであることに気がつきだす。

シェークスピアが描いた特別な二人が400年のときをへて今や、ニブロールと矢内原美邦によって、完全にスペシャリティをかわされ、私たちの中にも存在する熱情と狂気をにじりだし、突きつける。「そう、キミはジュリエット、ボクはロミオ。私たちの中にも熱情と狂気のDNAがしっかりとあるんだよ」だからこの「ロミジュリ」は他人事ではなく、私たちの内側にしみ込むように、どんどんリアルなメッセージと、共感を発信し続ける。舞台と客席がそのことで「No,No Border」になる。

いきなり自身が出てきて、ヤナイハラダンスメソッドをしっかりと展示した、振付の矢内原美邦はもとより、映像の高橋啓祐のビジュアルメッセージ、何層もの紗幕スクリーンに映し出す威力は、あまりに大きい。言葉の粒子によって形成された不確かな現代の人類、モノローグを語るダンサーをゆったりとリンクしていく曲線のアニメーションは、視覚を激しくときに穏やかに照射する。ロマンティックな夜想曲から、いきなりジャジーなモダニズムの咆哮、音楽のスカンク、オリジナルサウンドが、観客の身体を貫通する。そして変幻自在、アヴァンギャルドファッションをコレクションする矢内原充志。照明デザインの滝之入海は、舞台を計画的にゾーニングしていった。

さて、現在日本で、完全なコラボレーションでこれほど過激に、しかも大きな作品としての充実感を示しながら、さらには形式や表現遊びではなく、私たちの心の奥底にまで届く、切なく、激しく、優しい舞台を作っているのは、ニブロールだけではないだろうか。これはひとつの奇跡である、そう思ってうなってしまった。拍手!!!


☆☆☆☆☆

ニブロール今後の予定
08年3月1日~16日 
オンケンセン×ニブロール ワークショップ+ワークインプログレス公演@急な坂スタジオ
08年5月末『no direction。』海外/国内ツアー
       @桜美林大学構内<「GALA Obirin 2008」参加>
       @victoria theater<「Singapore Arts Festival」参加>

矢内原美邦 その他の活動
ミクニヤナイハラプロジェクト:
08年4月18日~20日 『3年2組』@愛知県芸術劇場小ホール
<「第8回愛知県芸術劇場演劇フェスティバル」参加>
08年7月中旬 演劇公演@こまばアゴラ劇場

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