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2006/04/18

「ヤダとイイヨ」(リーガル出版) ぶん・つじひとなり/え・杉谷知香

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emi hiruta 評

『イイヨくんの後ろ姿に、思わず涙も…』

この冬にイラストレーター・杉谷知香さんと作家・辻仁成さんとで、はじめての絵本を出版しました。なんでも「やだ」と言ってしまうヤダくんと、なんでも素直に「いいよ」と言えるイイヨくんのふたりの物語です。

私はこのお話を読んだとき、登場人物を自分の甥をダブらせていました。もちろん「イイヨくん」とです。ただの伯母バカと言ってしまえばそれまでですが、容姿も彼を彷彿とさせます。とは言っても彼に「ヤダくん」が存在しなかったとは否めません。むしろヤダ連発の時期があったくらいです。しかし幼稚園に行くようになった頃ぐらいから、イイヨくんになりました。

「ヤダ」から「イイヨ」が言えるようになるとき、こどもは初めて大きく成長するのでしょう。他人という存在を認識し、人と共存することを学び、そのことに対して前向きになる。生きていく上でとても大切なことです。しかし“素直に”いいよと言うのは大人になった今でも、難しいときがあるような気がします。

そして、この絵本は杉谷さんによって息が吹き込まれました。彼女の絵は柔和なのに主張があり、強さのなかに優しさを感じます。また、ふたりのやりとりが聞こえてくるような空気感を生じさせ、話をいっそう盛り上げてくれています。とくにクライマックスのイイヨくんの後ろ姿には、辻さんの文章と相まって感動の涙を誘われるほどでした。

いつの時代も絵本の世界は、何もかもを可能にし、矛盾も疑問も無関係、楽しい気分だけが味わえるユートピア。なのに、読み終わったときには何かを学んでいる…、夢の哲学書。こどもにとってはもちろんのこと、大人にもオススメしたい「ヤダとイイヨ」は人生観を改めるいいきっかけになるかもしれません。

ぶん・つじひとなり え・杉谷知香
『ヤダとイイヨ』(リーガル出版) 1890円

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