« “横浜ダンスコレクション R 受賞者公演” | トップページ | “ストロベリークリームと火薬” »

2006/04/17

“ザ・フォーサイス カンパニー2006(Bプログラム)”

Da_060228_theforsythecompany01thumb Da_060228_theforsythecompany02thumb

榎本了壱  評

『ダルマサンガコロンダ、モンスターレース、そして・・・』

最初の“Clouds after Cranach”(Part1)は、ダルマサンガコロンダ状態のような、ドミノ倒しのような動きの連鎖と停止。バラバラバラ、ピッ!ピッ!ピッ!バラバラバラバラバラバラ、ピッ!といった具合の連続。誰かからか、あるいはわずかにずれた同時多発の起動によって、ことが起こっては、かなり短いスパンで終息していく。

と思うとまた始まる。やっぱりダルマサンガコロンダ、だ。いやこれは、生命連鎖のようなものを連想させる。何かが生きだすことはそれ独自によって自発的に生まれ出てくるのではなく、全体の大きなエネルギーの円環の中から、わずかな微小なサインが送られ、それに感応したものが、ゆっくりと、あるいはすばやく化学反応するように、生命体の一端として芽吹きだす。そんなムーヴメントの連続の中で、このダンス生命体は、白色巨星のように肥大化し、一人ひとりが大きな一粒の粒子のように膨張して、そして全ての視界から消え去っていった。無音の宇宙だけが、次の起動をゆっくりと待ち受けている。
“7to 10 Passages” は、モンスターたちの超低速20メートル競走。左右に並べられたテーブルの間を、7人のランナーが超高速度カメラで撮影したようなスローモーションで、肩がとがりだすように体がゆがみ、ほとんど認知できないような動きの変化の中で、レースを開始しだす。いかに動かないことで、ダンスたり得るか、というまるで禅問答のようなダンスである。そういえば、70年代に田中泯が全裸でペニスに包帯を巻いてコンドームをかぶせただけの「舞態」シリーズをやったときもほとんど動かず、時には眠ってしまったりもしていたが。あるいは「舞台の上で突っ立ったまま死んでいる」といったのは土方巽ではなかったか! いずれにしても、そこにいるだけで、ダンスであることの証左、それはダンサーだけに許された特権なのだ。
やがて左右のテーブルに座った4人が話し出す。その中にオレンジ色のシャツを着たモンスターがいて、体をくねらすように、遠吠えするように発声する。その隣りの女性は実に冷静に“Monster said…”と、粛々と報告し続ける。言葉のやり取りに重い意味があるわけではない。音声、信号のような単語、“Yes“ “No“のシンプルな共感、肯定と、否定、そして拒絶。言葉に気を取られているうち、レースのランナーたちはその位置を恐ろしくばらばらにしながら、すでにレースではない何かのシステムの中に生き始めているのだ。
最後の“One Flat Thing, reproduced”は、理科の実験教室で暴れるバカがき、ワルがきたち。いきなり12台の重たいウッドパネルが張られたテーブルがダンサーによって引き出され、舞台のほとんど半分を埋め尽くす。なんだか中学校の理科の実験室みたいになる。そのテーブルの間にダンサーたちが行き交い、やがてテーブルの上にも上がりだす。80センチほどの高さのテーブルは、その瞬間から、もうひとつのグラウンド、もうひとつのステージとして存在し始める。もちろんテーブルの足は細いスティール製で、第2のグラウンド(ステージ)の下、第1グラウンド(本来のステージ)面の動きも、透過するように見ることが出来る。第1グラウンドに立っているダンサーは、半身が地下に沈んでいるようにも見えるし、第2グラウンド(テーブルの上)のダンサーは、浮遊するステージの上にたゆとうあやうげな存在にも見える。たかだかテーブルを隙間だらけに整列しただけで、そこに創出した二つのグラウンド(ステージ)が、今まで体験したことのないような、身体の断裁、接続を2層の空間にコンバインされたような、奇妙な空間の中で展開するのである。それはほんとにワルがき、バカがきたちの騒ぎほどの、激しさとそれにもました滑らかさのうちに、オーディエンスが視覚の陶酔に入り始めた瞬間、ガーッ!と強烈な音を立ててテーブルは引き下げられ、闇に中に消えてしまう。なんという戦略!なんと言う計算! 呆気に取られるまもなく、私は拍手をしていた。(3月4日所見)

star01

|

« “横浜ダンスコレクション R 受賞者公演” | トップページ | “ストロベリークリームと火薬” »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/174560/9635534

この記事へのトラックバック一覧です: “ザ・フォーサイス カンパニー2006(Bプログラム)”:

« “横浜ダンスコレクション R 受賞者公演” | トップページ | “ストロベリークリームと火薬” »